日本に初めてコーヒーがやって来たのは、江戸時代初頭のころと言われています。当時の日本は鎖国をしていたことから外国との接点はほとんどなく、唯一出島があった長崎にコーヒーが伝えられました。欧州諸国ではコーヒー文化が栄えた時期で、コーヒーハウスなどが続々とオープンしていました。その流れもあり、オランダからコーヒーが日本に持ち込まれるようになったのです。海外から初めて持ち込まれたコーヒーは、長崎の出島のオランダ商館に到着したと考えられています。出島付近で外国人に接近することが出来た日本人である役人や商人、通訳や遊女はコーヒーに触れる機会があったとされていますが、その独特な味わいと香りに馴染めずに日本全国に広がることはありませんでした。
その頃に日本で初めてコーヒーを飲んだ人物が居ます。それはコーヒーを飲んだ感想を書き残した大田南畝です。大田南畝は江戸出身の人物で、俳句を滑稽に詠んだ狂歌の発展に携わり、ベストセラーの随筆を発表した人です。役人として仕事をした経験もあり、長崎奉行所に勤めていました。長崎奉行所に勤めていたときに、初めてコーヒーを飲んだとされています。数々の随筆を発表している彼はコーヒーを飲んだときの感想も残していて、「カウヒイ」というものを飲んだと書き残しているのです。
西洋文化の象徴的なアイテムであるコーヒーは江戸時代ではあまり普及しませんでしたが、明治時代になると一気に知名度を上げていきます。鎖国をしていた過去を反省して、積極的に外国人とも関わらなければならないと人々が感じたタイミングで流行りだしたのです。西洋文化をより深く勉強して、西洋人とも親しくなろうという思いがコーヒーを受け入れるきっかけとなりました。また横浜や神戸、函館や長崎などには外国人居留地が作られたことによって、外国人と接する機会も自然と増えます。そこで外国人から西洋の紹介をされることによって、コーヒーを口にすることになります。始めは上流階級の人々が嗜好品として嗜んでいたのですが、東京上野に「可否茶館」がオープンしたことによって、庶民にもコーヒーが広がったのです。フランスのカフェをイメージした店内で、明治時代では珍しいおしゃれなお店でした。その影響を受けて次々と日本全国に喫茶店が誕生したことで、日本人にコーヒーが普及したのです。そして大正時代にはコーヒー好きの人が現れるようになり、戦後にはインスタントコーヒーなどの誕生によってより人々に身近な存在となりました。
歴史を知ってコーヒーを楽しむ
コーヒーが日本国民に支持されるまで長い年月が必要でした。今では普通に飲んでいるコーヒーですが、味に馴染むまでに時間が掛かったのです。人々に受け入れられるようにと焙煎のやり方や砂糖を入れるなどアレンジを加えて、ここまで日本人に親しまれる飲み物となった歴史があります。そんな紆余曲折あったコーヒーの歴史に思いを馳せながら1杯のコーヒーを飲んでみるのも楽しいかもしれません
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